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古代末期~中世ビザンツ期城塞の年代測定にむけた物質的・統計的アプローチの開発
日本学術振興会
科学研究費助成事業 挑戦的研究(萌芽)
深津 行徳, 小口 千明, 堀田 一弘, 浦野 聡, 樋口 諒, 村上 祐子
2020年7月
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2023年3月
課題番号:20K20721
配分額:6370000円
(
直接経費:4900000円
、
間接経費:1470000円
)
城壁建築の年代決定のための科学的な根拠を模索しようとする本研究は、建材(転用材、 礫石材、煉瓦材、接着用モルタル材)に注目して、建材の積み方の様式変化と、建材の風化による損耗度に注目する二つのアプローチを試みることとした。フィールドはリキア地方の沿岸から内陸にかけて、検討対象はこの地域の10~20程度の城壁とし、新型コロナウィルスによる海外渡航制限が解除されない場合には、建材の風化による損耗度に絞り、沖縄等の石灰岩製城壁を対象にデータを蓄積するとともに、調査の有効性を探ることとした。
しかし緊急事態宣言に依って国内調査も不可能と判断し、実験室レベルでの弾性波速度試験機による強度試験・硬度測定試験を行った(遠方の研究分担者はリモートで参加)。リキア地方の石灰岩を含む多様な石材について試験的なデータを採取し、以下の課題が明らかとなった。
1.同一測定物の複数回の測定結果が必ずしも安定しない。→測定対象物の表面劣化が進んでいる場合にはさらなるデータ収集の困難が予想され、対象物との接着面の工夫が必要になる。
2.試料の不足から、建材の風化による損耗度を測定できない。→リキア地の城壁建築で用いられている石灰岩と煉瓦材・モルタル材の風化速度を予め推定するためには、多量の試料が必要である。もしトルコ・日本での現地調査ができない場合には、日本で入手可能で「物性的にリキアの石灰岩と最も近い石材」を確定したうえで試料を集め、弾性波速度試験機によるデータの蓄積が必要である。
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ポストトゥルースの時代における新しい情報リテラシーの学際的探求
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
久木田 水生, 大澤 博隆, 藤原 広臨, 林 秀弥, 平 和博, 伊藤 孝行, 大谷 卓史, 笹原 和俊, 中村 登志哉, 村上 祐子, 唐沢 穣
2019年4月
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2023年3月
課題番号:19H00518
配分額:40170000円
(
直接経費:30900000円
、
間接経費:9270000円
)
本研究ではフェイクニュースなどが広がる原因についての実証的な研究、それに対抗するための制度や倫理などの規範的研究、および人々がよりよく情報の生産と利用ができるようになるための教育活動を行っている。本年度はソーシャル・メディアなどによってフェイクニュースが拡散される実態、メカニズムについて計算社会科学、メディア論的観点から実証的研究および分析を行った。計算社会学の研究では、社会的影響とつながりの切断がソーシャルネットワークにおけるグループの分断と意見の均一化をどのようにして引き起こすかを明らかにした。規範的研究においてはコミュニケーションの価値についての哲学的・人類学的探究を行い、コミュニケーションの多様なあり方とコミュニケーション技術発展の歴史から、現在の「ポストトゥルース」的状況を理解するための枠組みを考察し、またそれを乗り越えるための方法論について考察した。特にソーシャル・メディアのコミュニケーション技術としての特徴を他の技術と比較するための枠組みを考案し、比較を行った。また人間や他の動物のコミュニケーションの違いと共通点、コミュニケーションの起源などからコミュニケーションが本来持つ機能や目的を明らかにしたうえで、現在のコミュニケーション技術の評価を行った。また本年度は新型コロナという特殊な状況の中でフェイクニュースの問題がより深刻化したこともあり、新型コロナの状況におけるソーシャルメディアをめぐる法的・倫理的問題について調査と考察を行った。教育的活動としては市民講座などでの講演、公開シンポジウムなどの開催、新聞や一般紙への寄稿、放送用教材の提供などをおこなった。
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尊厳概念のグローバルスタンダードの構築に向けた理論的・概念史的・比較文化論的研究
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(S)
加藤 泰史, 小松 香織, 前川 健一, 松田 純, 宇佐美 公生, 石川 健治, 竹下 悦子, 上原 麻有子, 清水 正之, 齋藤 純一, 松井 佳子, 後藤 玲子, 小倉 紀蔵, 村上 祐子, 中村 元哉, 小島 毅, 品川 哲彦, 水野 邦彦, 林 香里
2018年6月
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2023年3月
課題番号:18H05218
配分額:169650000円
(
直接経費:130500000円
、
間接経費:39150000円
)
平成30年度の研究計画にもとづき、8月に一橋大学で分担者および協力者(国内)と研究打ち合わせを行い、平成30年度の計画を確認すると同時に、分担者の村上祐子氏が研究発表を行った。また、分担者および協力者の何人かに、『思想』2019年3月号および4月号の特集で研究成果の一部を発表してもらうように再度依頼して確認した。なお、代表者の加藤は8月にWCP北京大会に参加してプレゼンテーションを行った。
10月に代表者が渡独してシェーンリッヒ教授(ドレスデン工科大学)らと論文集の編集およびそれに関連した国際ワークショップ企画に関して打ち合わせを行うとともに、11月に一橋大学で網谷壮介氏(立教大学)らを招聘して概念史的研究の一環である「第7回スピノザ・コネクション」を開催した。
12月に東京大学で、非欧米圏担当の分担者および協力者と研究打ち合わせを行うと同時に、金光来研究員(東京大学)の講演会を行った。
平成31年1月に代表者が、10月に一橋大学で開催予定の国際ワークショップの企画および論文集編集の件で再度渡独し、クヴァンテ教授(ミュンスター大学)・ポルマン教授(ベルリン・AS大学)らと研究打ち合わせを行うと同時に、シェーンリッヒ教授の主催する研究会に参加した。
3月に京都大学で、科研費のワークショップを開催し、代表者の加藤と分担者の小島・小倉両氏が研究発表を行い、またニーゼン教授(ハンブルク大学)・マリクス准教授(オスロ大学)・バーデン教授(イリノイ大学)・デルジオルジ教授(エセックス大学)を招聘して一橋大学で国際ワークショップと、さらに手代木陽教授(神戸高専)らを招聘して「第8回スピノザ・コネクション」を開催すると同時に、『ドイツ応用倫理学研究』第8号を刊行するとともに、科研費のHPも完成させた(http://www.soc.hit-u.ac.jp/~kato_yasushi/)。
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日本の尊厳概念史・影響作用史の構築に関する総合的研究--欧米との比較を踏まえて
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
加藤 泰史, 宇佐美 公生, 石川 健治, 上原 麻有子, 清水 正之, 齋藤 純一, 松井 佳子, 後藤 玲子, 村上 祐子, 小島 毅, 品川 哲彦
2018年4月
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2019年3月
課題番号:18H03567
配分額:43290000円
(
直接経費:33300000円
、
間接経費:9990000円
)
日本哲学会と金沢大学の第1回鈴木大拙・西田幾多郎記念金沢大学国際賞の記念講演会に参加した。
日本哲学会に研究協力者2名も同行してもらい、研究発表などを行ってもらうと同時に、研究分担者の一部の先生にも紹介してこの研究プロジェクトが円滑に運営できるように指導した。なお、研究分担者の一人であるギブソン松井佳子氏の参加する主体概念の転換に関するワークショップから多くの示唆を得ることができて有益であった。この論点を研究プロジェクトにも組み込むことは有効であると思われた。また、金沢大学国際賞でのロベール氏の講演からも日本哲学が潜在的にもつ可能性を読み取ることができた。それはやはり主体概念に関わる論点であり、日本の尊厳概念史を考える上で、特に「生命の尊厳」を考察する上で重要な論点になりうると確信できた。
「生命の尊厳」に関連したこれらの論点は科学研究費基盤研究(S)にとっても重要な意味をもつので、その研究プロジェクトの中でも生かしていきたいと考えている。
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哲学分野における男女共同参画と若手研究者育成に関する理論・実践的研究
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
和泉 ちえ, 森 一郎, 飯田 隆, 小手川 正二郎, 秋葉 剛史, 河野 哲也, 笠木 雅史, 池田 喬, 鈴木 伸国, 村上 祐子, 大河内 泰樹, 佐藤 靜, 加藤 泰史, 吉原 雅子, 小島 優子, 菅原 裕輝, 金澤 修, 筒井 晴香, 菅原 裕輝
2016年4月
-
2019年3月
課題番号:16H03338
配分額:13390000円
(
直接経費:10300000円
、
間接経費:3090000円
)
本研究は,日本哲学会男女共同参画・若手研究者支援ワーキンググループが中心となり,哲学分野における男女共同参画推進と若手研究者支援に関する理論的考察を深化させると共に,大規模アンケート調査を複数回実施することによって得られた根拠事実の精査・公表を踏まえ,学術としての哲学が健全に継承されるために必要なジェンダー平等推進と若手研究者育成を支える基盤を理論・調査・実践の三方向から構築した.また日本哲学会大会におけるワークショップの継続的展開,北海道哲学会,東北哲学会,関西哲学会,西日本哲学会,科学哲学会との共催ワークショップの初の開催,さらに英国哲学会との協力関係の構築等々を通して議論の場を拡充した.
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科学に基づいた道徳概念のアップデート
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
久木田 水生, 神崎 宣次, 村上 祐子, 戸田山 和久, 中村 美知夫, 三輪 和久, 服部 宏充, 大澤 博隆, 川口 潤, 平 理一郎
2016年4月
-
2019年3月
課題番号:16H03341
資金種別:競争的資金
配分額:10790000円
(
直接経費:8300000円
、
間接経費:2490000円
)
本研究では「道徳性」について、様々な科学の分野で得られている知見と、哲学・倫理学分野で伝統的に受け入れられている見解との相違点を明らかにした。具体的には哲学・倫理学においては、個人の自律性や理性を重視した道徳性理解が主流であるが、実際には感情的身体的要因、社会的環境的要因が道徳的判断において重要であること、それらと合理的要素が複雑に入り組んで道徳的判断が可能になるということが明らかになった。それを踏まえて、私たちは「機械倫理」と呼ばれる、人工知能やロボットに道徳的判断や道徳的行為を行わせる研究分野において、「倫理的な機械を作る」という問題のフレーミングそのものに困難があることを見出した。
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シンギュラリティと責任の論理
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
村上 祐子, 辰己 丈夫, 大谷 卓志
2015年4月
-
2018年3月
課題番号:15K01978
担当区分:研究代表者
資金種別:競争的資金
配分額:4810000円
(
直接経費:3700000円
、
間接経費:1110000円
)
課題期間中に当初想定の人工知能が人類を滅ぼすというシンギュラリティ論の指摘するフェーズは過ぎたと判断し、電子的法人格、人間性、責任など哲学的概念の変容に注目して分析を進めており、欧州において実務提案が行われたことから方向性は正当化された。論理的記述については今後も進展させたい。学術・実務・教育というそれぞれの現場における人工知能の利用について調査した。人工知能の学術利用の可能性と研究者の労働代替のリスクについて議論を行った.教育現場における人工知能利用に関して現場のニーズについてケーススタディを行ったが、道徳的ジレンマの詳細分析は今後の課題である。
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プライバシーと自己決定権の限界:情報倫理学的知見と歴史的事例からの考察
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大谷 卓史, 村上 祐子, 川口 由起子, 川口 嘉奈子, 永崎 研宣, 坪井 雅史, 吉永 敦征, 芳賀 高洋
2014年4月
-
2018年3月
課題番号:26370040
配分額:4940000円
(
直接経費:3800000円
、
間接経費:1140000円
)
本研究においては、①最新の社会・技術動向に照らして大学教養課程向けの情報倫理学教科書を改訂して基本的な情報倫理学概念を確認し、②情報倫理学の歴史を整理し、あわせて、③プライバシーと自己決定権に関する議論を概観したうえで、④ソーシャルメディアによる個人をターゲットとした世論操作の可能性や、⑤サーチエンジンの検索結果表示アルゴリズムなどによるプライバシーや自律への影響の問題などの考察を行った。これらの成果を踏まえ、研究成果の一部を書籍として刊行した。同書『情報倫理-技術・プライバシー・著作権』(みすず書房)は、公益財団法人電気通信普及財団第33回(2017年度)テレコム社会科学賞奨励賞を受賞した。
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大学教育改善の促進と教育イノベーション普及のための「大学教育コモンズ」の構築
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(A)
飯吉 透, 梶田 将司, 酒井 博之, 溝上 慎一, 喜多 一, 小野 和宏, 岡部 洋一, 尾澤 重知, 土佐 尚子, 田地野 彰, 高橋 幸, 重田 勝介, 大塚 雄作, 松下 佳代, 鈴木 晶子, 田口 真奈, 村上 正行, 内村 浩, 加藤 恭子, 筒井 洋一, 天野 一哉, 駒井 章治, 鈴木 敦, 坂田 信裕, 稲葉 利江子, 神谷 健一, 村上 祐子, 田中 一孝, 岡本 雅子, 木村 修平, 辻 靖彦, 大久保 麻美, 小河 一敏, 亀田 真澄, 辰島 裕美, 米谷 淳, 水野 邦太郎, 田中 浩朗, 矢野 浩二朗, 成瀬 尚志, 椙本 歩美, 齊藤 弘通, 芳賀 瑛, 渡邊 美智留, 三浦 和美, 道幸 俊也, 津吹 達也, 櫻井 典子, 常見 幸, 鈴木 美伸
2013年4月
-
2016年3月
課題番号:25242017
配分額:44460000円
(
直接経費:34200000円
、
間接経費:10260000円
)
本研究は、大学教育の体系的・持続的改善のために、教育知の共有と実践コミュニティ構築を支援する「オープンナレッジ・プラットフォーム」として、オンラインシステム「大学教育コモンズ」の開発をおこなった。マルチメディアポートフォリオを利用し、経験的教育実践知の蓄積・共有を促進する概念的モデルの実証的検証を行った結果、学問分野、教員や授業に依存する固有の文脈を超えて教育実践知を蓄積・共有するためのイノベーティブな方法と支援システムの効果が実証された。
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哲学のための中上級論理学推進
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
村上 祐子, 矢田部 俊介
2011年4月
-
2015年3月
課題番号:23520008
配分額:5200000円
(
直接経費:4000000円
、
間接経費:1200000円
)
哲学専攻者向けの中上級論理学の授業として、一般向けの1階述語論理の概略に加えて(1)自然演繹による部分構造論理(2)様相論理(3)代数論理といった内容の授業開発を行うとともに、国内外の論理学者・哲学研究者を招いて哲学的論理学の最先端の研究が哲学に及ぼす影響についての意見交換を行い、哲学教育に含めるべき論理学の概要を上記に設定した。
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研究関連組織の科学普及活動実践者のキャリアパス:実態と可能性
日本学術振興会
科学研究費助成事業 挑戦的萌芽研究
久利 美和, 村上 祐子
2012年4月
-
2014年3月
課題番号:24650512
資金種別:競争的資金
配分額:3900000円
(
直接経費:3000000円
、
間接経費:900000円
)
初年度初年度は,研究機関およびその助成金を活用しての直接的または間接的に科学普及活動に従事する人材の意識調査、就業形態、また実施される企画の有償かの可能性について聞き取り調査を行い、キャリアパスとして必要な視点が、報酬体系の確立と評価手法についてであることが明らかとなった。次年度は、研究管理の観点で関連業務者の報酬体系の実態に焦点を当てるとともに、報酬体系の根底にある概念についても意見抽出を行った。また、海外の事例を含めた検討会を国際会議の場で行った。
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歴史的・論理学的手法を用いるプライバシーの多義性と文脈依存性に関する研究
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(C)
大谷 卓史, 村上 祐子, 川口 由起子
2011年
-
2013年
課題番号:23520048
配分額:4680000円
(
直接経費:3600000円
、
間接経費:1080000円
)
プライバシーの多義性と文脈依存性について論理学・歴史学の成果を活用して整理を行ったうえで、最新の米国の法学理論書を翻訳した。歴史的に見て広くプライバシー類似現象が存在することを示し、論理学により役割によるプライバシー情報の取り扱いに関する規範が変わることを示した。情報倫理学の知見と対面的相互行為に関する社会学理論を応用し、道徳的自律および他者への自己提示の自由を侵害することがプライバシー侵害の危害であることを解明し、情報通信技術が媒介する非対面的行為にもこの理論が適用できることを示した。情報倫理学研究会を主催し、研究会主要メンバーによる大学教養課程向けの情報倫理教科書を編集・著作した。
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科学技術社会論と融合のちクリティカルシンキングの研究および教育手法開発
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
伊勢田 哲治, 調 麻佐志, 戸田山 和久, 村上 祐子, 青木 滋之, 久保田 祐歌, 楠見 孝, 菊池 聡, 出口 康夫, 三浦 俊彦, 元吉 忠寛, 吉満 昭宏
2009年
-
2011年
課題番号:21300323
配分額:8450000円
(
直接経費:6500000円
、
間接経費:1950000円
)
本研究課題の研究の成果としては、第一に、クリティカルシンキングと科学技術社会論それぞれの見直しと、理論的な拡充がある。抽象的な思考技術としてのクリティカルシンキングの具体化が本課題を通して進められ、また双方向コミュニケーションや疑似科学の問題をクリティカルシンキングの中に位置づけなおすためにメタCTという概念が導入された。科学技術社会論に対してもクリティカルシンキングの技法をどう位置づけるかという問題に解決を与える過程で、欠如モデルと双方向モデルを相対化し、適切に使い分けるための思考のプロセスが提示された。
もうひとつの成果は、科学技術社会論的なクリティカルシンキング、という、具体性と抽象性をバランスよく併せ持った教育フォーマットが作られたということである。具体的には、科学技術の関わる社会問題について両論併記しながら、その問題を読み解くために必要な科学技術社会論の知識とクリティカルシンキングの技法を提示し、実践的に学んでいくというユニットシステムの教育手法の開発を行った。二つを融合させたということは単に教育効率の問題ではない。本研究が提示したのは一見したところどう結びつけてよいかわからない二つの思考スタイルを統一的なものとして提示する教育フォーマットであり、そこにはどちらの領域にも還元されない独自の要素として、クリティカルシンキングそのものを批判的に反省するという教育手法がつけ加わっている。
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科学技術における討議倫理のモデル構築
日本学術振興会
科学研究費助成事業 基盤研究(B)
野家 啓一, 座小田 豊, 直江 清隆, 戸島 貴代志, 荻原 理, 長谷川 公一, 原 塑, 北村 正晴, 村上 祐子, 小林 傳司, 八木 絵香, 日暮 雅夫, 山本 啓
2009年
-
2011年
課題番号:21320002
配分額:15990000円
(
直接経費:12300000円
、
間接経費:3690000円
)
討議倫理学に基づく科学技術の対話モデルを作るために、科学技術的問題をテーマとする対話を実践し、そこから理論的帰結を引き出す研究を行った。その結果、以下の成果がえられた。
1. 高レベル放射性廃棄物の地層処理に関する推進派と反対派の対話では、合意にいたることは困難だが、対話を通じて、理にかなった不一致に至ることは重要性を持つ。
2. 推進派専門家と反対派専門家が論争を公開で行った場合、その対話を一般市民が聴いて、めいめい自分の見解を形成することがあり、このことが対話を有意義にする。
3. 対話を成功させるためには、信頼や聴く力、共感のような習慣や徳を対話参加者がもつことが重要であり、このような要素を討議倫理学の中に取り込んでいくことが必要である。
4. 対話では、価値に対するコミットメントを含む公正さが重要で、追求されるべきであり、それは、価値に対する実質的コミットメントを持たない中立性とは区別される。
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非正規様相論理の理論と応用
日本学術振興会
科学研究費助成事業 特別研究員奨励費
村上 祐子
2000年
-
2002年
課題番号:00J06372
配分額:3600000円
(
直接経費:3600000円
)
平成14年度は、前年度に引き続いて非正規様相論理の理論を展開するとともに、特に哲学理論への応用に関する方法論的検討を中心に研究を進めた結果を学会・ワークショップにて発表した。
2002年6月には「様相は必然性ではない」(科学基礎論学会、東京工業大学)で、人工知能などさまざまな分野への様相論理の応用が進展する一方で、哲学的限界の打開という問題に対してはいまだに試行錯誤が続いている状況への対策として、ともすれば狭義に捉えられ必然性と同一視されることすらある様相概念をより広い文脈で捉えなおす必要があることを論じた。
2002年11月には"Non-monotonic modalities : philosophical motivations and applications"と題する講演(京都科学哲学コロキアム、京大会館)を行い、哲学的論理学という学問分野全体における様相論理の理論と応用の位置づけに関する方法論的考察を示した。
さらに、2003年2月には講演"Beyond bare monotonicity"(言語・行為・認知ワークショップ、北海道大学)を行い、特に言語行為にまつわる概念を様相論理を用いた哲学的論理学のアプローチで処理した場合のパラドクス現象に注目することにより、非正規様相論理に焦点を当てた場合においても応用の目的にあわせて適切な意味論と論理体系を提示することの重要性を強調した。
また、2003年3月の講演「様相アプローチ検討」(名古屋哲学フォーラム、南山大学)では、それまでの研究で明らかになった問題を解決するために「言語行為では最大情報をもたらさなければならない」(最大情報性仮説)を提案するとともに、最大情報性を様相論理の枠組で把握するための予備的考察として階層化された可能世界を認めるべきであるという「分割主義」の考え方を新たに提示した。
また理論的背景となる「様相論理」「不完全性定理」「自己言及」について、『AI事典』(土屋俊他編、共立出版)項目として執筆し、人工知能の基礎研究としての論理学の応用可能性について論じた。
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