日本語学
言語学
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2023年4月 - 現在日本語教育センター(国際化推進機構) 教育講師
【お知らせ】
★2025年3月2日(日)社会言語科学会@慶應義塾大学で発表します
タイトル:漫才における逸脱的な造語「文の包摂」の使用―「EXILEオーディション二次審査で落ちる顔」―
★2025年2月1日(土)言語学フェス@オンラインで発表します
タイトル:逸脱的な造語ーそんなことないよ待ちするかまってちゃん vs 話しかけるなオーラ全開の絶対関わりたくないマンー
※本発表は、2024年日本語用論学会第27回大会シンポジウムの発表内容に基づき、言語学が専門ではない「一般の方」向けに再構成したものです。あらかじめご了承ください。
★2025年1月7日『ゆる言語学ラジオ』にて著書『現代日本語の逸脱的な造語法「文の包摂」の研究』を紹介していただきました。動画はこちら(19分57秒~)
★2024年12月1日:著書『現代日本語の逸脱的な造語法「文の包摂」の研究』の書評が日本語学会編『日本語の研究』第20巻3号(pp.73-81)に掲載されました。神戸学院大学・野田春美先生にご執筆いただきました。
★2024年12月1日:日本語用論学会第27回大会シンポジウム「言語コミュニケーションのなかの逸脱と創造性」にて招待講演「第1部:日本語の語構成における逸脱―「文の包摂」を対象に―」「第2部:逸脱的な造語法から広がる言語研究 」を行いました。
★2024年2月24日:ひつじ書房さんから著書『現代日本語の逸脱的な造語法「文の包摂」の研究』が刊行されました。
ご興味のある方はぜひお手に取っていただけますと幸いです。
・まえがき
【研究】
専門:日本語学(語彙論)
新しい語がどのように形成されるのか(語形成論・造語論)、品詞でいうと名詞(複合名詞・派生名詞)に関心があります。 特に、一般的な規則を逸脱する特異な語形成に関心があり、語形成と逸脱性の関係について研究をしています。具体的には、次のような言語表現(複合名詞・派生名詞の前項が文相当の要素であるもの)を研究対象とし、主にコーパスを用いた用例の収集と実例の記述に基づく考察を行っています。
「振り込め詐欺」「母さん助けて詐欺」「やってみなはれ精神」「ウルトラ!ゼンリョク!幻のポケモンをもらおうキャンペーン」「バカヤロウ解散」「いいねボタン」「困ったな状態」「早く帰れオーラ」「どっちなんだよ問題」「あったらいいな程度」「今すぐ辞めろ発言」「当たって砕けろ作戦」「遊んで遊んで攻撃」「俺すごいだろアピール」「やっちまったな感」「私頑張ってます風」「かまってちゃん」など種々の用例が観察されます。
「句の包摂」の延長上にある「文の包摂」とも言うべき当該の言語現象について研究を進めています。述べ切られているわけではありませんし、語構成要素になっているので、厳密に言えば「文」ではありませんが、便宜的に「”文”の包摂」と呼んでいます。
これまでは現代日本語を研究の対象としていましたが、最近は歴史的な観点からも「文の包摂」現象を見たいと考えております。例えば、「内にもご覧ぜさせよがほ」(今昔物語集)のような用例があります。
現代語「おいてけぼり」の語源である「置いてけ堀」は、江戸時代から本所にある池の名前です。その池で釣った魚を持って帰ろうとすると、「置いてけ~置いてけ~」という声が聞こえてきたこと(本所七不思議)に由来してこのような名前がついたそうです。これも一種の「文の包摂」ではないかと思われます。
さらに、通言語的に見ると、英語には、I don’t know faceのように、日本語の「文の包摂」に類する現象も見られます。他の言語でもこのような逸脱的な造語が可能なのかもしれません(韓国語、チュルク諸語などでも可能なようです)。
これまでは主にいわゆる「打ち言葉」における実例収集を中心に行っていましたが、最近は会話データなどでも実例を集めています。会話の中ではどのように「文の包摂」が作られ、用いられているのか興味があります。 相互行為言語学にも興味があり、相互行為の中でこうした言語表現がどのように生まれ、使われ、そして消えていくのかについても関心があります。
【自己紹介】
仙台出身です。アメリカのカリフォルニア大学、タイのチュラロンコン大学、台湾の東呉大学に留学し、英語、タイ語、中国語を学びました。
留学を通して、言語学・日本語学の世界に興味を持ち、学部卒業後は企業で勤務するかたわら勉強し、大学院に入学しました。
現在は学部生向けの日本語学概論科目・日本語学演習科目(卒論指導含む)、留学生対象の日本語科目などを担当しています。