理学研究科 数学専攻 博士課程後期課程
理学研究科 数学専攻 博士課程前期課程
対称群
ヤング図形
シューア函数
Symmetric group
Young diagrams
Schur functions
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2025年4月 - 現在理学部 数学科 特任教授
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2025年4月 - 現在理学研究科 数学専攻 博士課程前期課程 特任教授
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2025年4月 - 現在理学研究科 数学専攻 博士課程後期課程 特任教授
研究者詳細
2025/05/29 更新
対称群
ヤング図形
シューア函数
Symmetric group
Young diagrams
Schur functions
自然科学一般 / 代数学 / 表現論,組合せ論
国名: 日本国
ヴィラソロ代数の被約フォック表現 査読有り
山田 裕史
代数的組合せ論シンポジウム2018報告集 38 - 45 2018年
算術的恒等式 査読有り
山田 裕史
Hokkaido Math.J.47 205 - 221 2018年
類正則分割 査読有り
山田 裕史
Hiroshima Math. J.47 ( 1 ) 15 - 18 2017年3月
シューア函数の恒等式 査読有り
Lett. Math. Phys.104 ( 10 ) 1317 - 1331 2014年10月
字数付きカルタン行列の組合せ論 査読有り
山田 裕史
Ann.Comb.17 ( 3 ) 427 - 442 2013年9月
ブラウアーシューア函数 査読有り
山田 裕史
Proceedings Quantized Algebra and Physics 1 - 9 2011年
Compound basis arising from the basic A(1)((1))-module 査読有り
Kazuya Aokage, Hiroshi Mizukawa, Hiro-Fumi Yamada
LETTERS IN MATHEMATICAL PHYSICS85 ( 1 ) 1 - 14 2008年7月
Rectangular Schur functions and the basic representation of affine Lie algebras 査読有り
Hiroshi Mizukawa, Hiro-Fumi Yamada
Discrete Mathematics298 ( 1-3 ) 285 - 300 2005年8月6日
Littlewood's multiple formula for spin characters of symmetric groups 査読有り
Hiroshi Mizukawa, Hiro-Fumi Yamada
Journal of the London Mathematical Society65 ( 1 ) 1 - 9 2002年
山田 裕史
数理解析研究所講究録1656 1 - 6 2009年7月
Mixed expansion formula for the rectangular Schur functions and the affine Lie algebra A(1)((1))
Takeshi Ikeda, Hiroshi Mizukawa, Tatsuhiro Nakajima, Hiro-Fumi Yamada
ADVANCES IN APPLIED MATHEMATICS40 ( 4 ) 514 - 535 2008年5月
On reduced Q-functions
Tatsuhiro Nakajima, Hiro-Fumi Yamada
Hiroshima Mathematical Journal27, pp.407-414 1997年
組合せ論プロムナード
山田 裕史( 担当: 単著)
2009年12月
非線型可積分系と表現論 -再訪-
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史
2021年4月 - 2024年3月
課題番号:21K03208
配分額:4290000円 ( 直接経費:3300000円 、 間接経費:990000円 )
相変わらずKdV 方程式系や変形KdV方程式系の広田表示について調べている.佐藤幹夫氏が1980年にこれに関する日本語の論説を書き(数理研講究録所収)計算結果 を表にしているが,その意味が最近になってようやく少しわかってきたところである.シューア函数やシューアのQ函数の恒等式が関係している.水川裕司氏によ る定式化に関連してシューア函数の恒等式かが登場するが,その証明も仕上げなければいけない.さらに対称群の p=2 のモジュラー表現論が本質的に関係しているらしい兆候が見られるので,その方向も現在模索中である.ヴィラソロ代数のフォック表現に関して面白い恒等式を見つけたので,青影一哉氏,新川恵理子氏 と共著論文を2編書いた.KdV とうまく関係付けられそうな気がするが;予断は禁物である.ヴィラソロ作用素とプリュッカー関係式は私の若い頃からの研究のモチべーションである.分割の単因子に関して千吉良直紀氏と共著論文を書いたが,まだ出版に至ってはいない.易しい初等整数論でありながら対称群の表現論の深い ところと繋がっている ような気配がある.レフェリーがいかなる判断を下すのか興味津々である.様々な一般化が可能であるはずでもう少し詳しく追求してみても面白いかなと思っている.
2017年度に採択された研究課題 17K05180 とは内容的に継続している.17K05180 の期間が延長されているので結果的に同内容の研究課題が2つ走っていることになる.
対称群のスピン表現から広田方程式へ
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史
2017年4月 - 2023年3月
課題番号:17K05180
配分額:4550000円 ( 直接経費:3500000円 、 間接経費:1050000円 )
相変わらずKdV 方程式系や変形KdV方程式系の広田表示について調べている.佐藤幹夫氏が1980年にこれに関する日本語の論説を書き(数理研講究録所収)計算結果を表にしているが,その意味が;最近になってようやく少しわかってきたところである.シューア函数やシューアのQ函数の恒等式が関係している.水川裕司氏による定式化に関連してシューア函数の恒等式が登場するが,その証明も仕上げなければいけない.さらに対称群の p=2 のモジュラー表現論かが本質的に関係しているらしい兆候が見られるので,その方向も現在精査中である.ヴィラソロ代数のフォック表現に関して面白い恒等式を見つけたので,青影一哉氏,新川恵理子氏と共著論文を2編書いた.KdV とうまく関係付けられそうな気がするが予断は禁物である.ヴィラソロ作用素とプリュッカー関係式は私の若い頃からの研究のモチべーションである.分割の単因子に関して千吉良直紀氏と共著論文を書いたが,まだ出版に至ってはいない.易しい初等整数論でありながら対称群の表現論の深いところと繋がっている ような気配がある.レフェリーがいかなる判断を下すのか興味津々である.様々な一般化が可能であるはずで,もう少し詳しく追求してみても面白いかなと思っている.
対称群のモジュラースピン表現論の構築に向けて
日本学術振興会 科学研究費
山田 裕史
圏論的有限次元性
日本学術振興会 科学研究費助成事業
木村 俊一, 山田 裕史, 與倉 昭治
2013年4月 - 2019年3月
課題番号:25287007
配分額:8840000円 ( 直接経費:6800000円 、 間接経費:2040000円 )
例えば円という図形は「xの2乗とyの2乗の和が1」という数式であらわされるが、0=「偶数」と1=「奇数」という数2つだけの世界でも、(偶数、奇数)と(奇数、偶数)の2点が同じ数式であらわされる「図形」となり「似た」性質を持つ。実は円の「神様」(モチーフ)があって、その影だから似た性質なのだろう、というのがモチーフ理論である。本研究ではモチーフそのものが「有限次元的」(あまり大きすぎず、計算可能)だと予想して、その証明に取り組んだが、Ayoub によりモチーフの有限次元性が証明された。これによりモチーフの大問題がいくつも解決し、理論は大きく進展した。
対称空間上のシュレディンガー方程式の幾何解析的構造の解明とその応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業
筧 知之, 田村 英男, 清原 一吉, 山田 裕史, ゴンザレス フルトン
2014年4月 - 2018年3月
課題番号:26400116
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
この研究において、本研究の研究代表者は対称空間上のシュレディンガー方程式の幾何解析に密接に関係する次の2つの課題(A),(B)を研究した。(A)対称空間上の平均値作用素。(B)フラクショナル・ラプラシアンを持つある種の反応拡散系。簡単に述べると、我々の結果は以下の通りである。(A) 非コンパクトな対称空間上の滑らかな関数の空間上の作用素として、平均値作用素が全射であることを示した。(B)ある条件の下での時間大域解の存在を示し、また、解の爆発に対する臨界指数を決定した。更に、爆発解の存在時間に関する最良評価を与えた。
対称群のモジュラー表現にまつわる組合せ論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 水川 裕司
2012年4月 - 2016年3月
課題番号:24540020
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
対称群のモジュラー表現に関連する指標表の行列式を求めた.またそれに関連して,専門家の間では知られている分割の恒等式を詳しく解析することにより, その(q,t)-アナローグを導出することに成功した.アフィンリー環の表現論との関係では,基本表現のウエイトベクトルの明示的な記述を用いてシューア函数,シューアのQ函数の不思議な関係式を発見した.
対称空間上のシュレディンガー方程式の代数構造および幾何構造の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
筧 知之, 田村 英男, 山田 裕史
2011年 - 2013年
課題番号:23540243
配分額:5070000円 ( 直接経費:3900000円 、 間接経費:1170000円 )
数論および表現論の視点から主にコンパクト対称空間上のシュレディンガー方程式の基本解の詳細な構造を研究した。我々の主結果の一つは次の通りである。ベクトルポテンシャルおよびコンパクト対称空間に関するある仮定の下で、磁場付きシュレディンガー方程式の基本解の特異台は、有理数時間において低次元部分集合となり、その集合は一般化されたガウス和を用いて与えられる。他方、無理数時間においては、基本解の特異台は対称空間全体と一致する。
対称群のモジュラー表現論から非線型微分方程式へ
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 吉野 雄二, 中村 博昭, 鈴木 武史
2009年 - 2011年
課題番号:21540016
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
自ら新たに導入した多項式「ブラウアー・シューア函数」に関しては, KP方程式系やその被約版,さらにはアフィンリー環の表現論でも一定の役割を果たすことが確認されつつある.中国天津での数理物理学国際会議で講演したことをまとめて「ブラウアー・シューア函数に関するノート」と題する短い論文を出版した.
巨大な群上の調和解析に向けた確率論と表現論の融合的研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
洞 彰人, 岡田 聡一, 楯 辰哉, 平井 武, 尾畑 伸明, 下村 宏彰, 河添 健, 山田 裕史, 新井 仁之, 西山 享, 伊師 英之, 松本 詔, 稲浜 譲
2007年 - 2010年
課題番号:19340032
配分額:14040000円 ( 直接経費:10800000円 、 間接経費:3240000円 )
巨大な群上での調和解析の展開に向けて、確率論と表現論の融合的な研究を推進した。調和解析とは、事物の対称性に着目することによって深い数学的構造を見出し、それに立脚した解析を行う学問分野である。本研究では、無限自由度をもつ大規模な対象を扱うため、その対称性を記述する群として巨大な群が現れる。得られた成果の中で最も主要なものは、(i)調和解析の素子となる指標と呼ばれる関数の分類と具体形を与える公式、および(ii)群の表現の漸近挙動と確率論の極限定理をつなぐ一連の結果である。
グロタンディークデッサンと悲合同的タイヒミュラー被覆の数論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
中村 博昭, 鳥居 猛, 鈴木 武史, 吉野 雄二, 山田 裕史, 松崎 克彦, 廣川 真男, 石川 佳弘
2007年 - 2009年
課題番号:19654005
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
昨年度に基礎を確立した複素および1進の反復積分の関数等式の導出法(Wojtkowiak氏との共同研究)を延長して,具体的な実例計算をさらに検証した.とりわけ古典的な高次対数関数について知られている分布関係式(distribution relation)の1進版を導出することに成功した.分布関係式は,様々な特殊値を代入することで,高次対数関数の特殊値の間に成立する様々な関係式を組織的に生み出す重要なものであり,1進の場合にも並行してガロア群上の関数族(1-コチェイン)を統御する要となることが期待されるが,前年度までに得られた関数等式との整合性についても検証を行った.8月にケンブリッジのニュートン数理科学研究所で行われた研究集会"Anabelian Geometry"において口頭発表を行った.このときの講演に参加していたH.Gangl氏,P.Deligne氏から今後の研究指針を考える上で有用になると思われるコメントを頂戴することが出来た.また分布関係式の低次項の解消問題に関連して,有理的な道に沿った解析接続の概念にっいて考察を進める必要が生じた.こうしたテーマに関連して研究分担者の鳥居氏には,有理ホモトピー論に関する情報収集を担当していただき,また研究分担者の鈴木氏には,量子代数やKZ方程式との関連で組みひも群の数理についての情報収集を担当していただいた.以上の研究成果の一部は,共同研究者のWojtkowiak氏と協力して,"On distribution formula of complex and 1-adic polylogarithms"という仮題の草稿におおよその骨子をまとめたが,まだ完成に至っていない.周辺にやり残した問題(楕円ポリログ版など)もあり,これらについて一定の目処をつけてから公表までの工程を相談する予定になっている.
対称群のモジュラー表現から可積分系へ
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 吉野 雄二, 中村 博昭, 石川 佳弘, 池田 岳, 吉野 雄二, 中村 博昭, 石川 佳弘, 池田 岳
2007年 - 2008年
課題番号:19540031
配分額:4420000円 ( 直接経費:3400000円 、 間接経費:1020000円 )
対称群のモジュラー表現論を非線型微分方程式系に応用することを念頭に置いて研究をおこなった. 対称函数の空間の新しい基底を導入し, シューア函数をこの混合基底で展開した時の係数が整数になることを発見した.
非線型微分方程式の組合せ論と表現論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 吉野 雄二, 中村 博昭, 平野 康之, 田中 克己, 池田 岳
2005年 - 2006年
課題番号:17540026
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
対称群の表現論を非線型微分方程式系に応用することを念頭に置いて研究を行った.具体的には対称群のモジュラー表現論で重要な働きをするカルタン行列について詳しく調べた.2被約シューア函数をシューアのQ函数で展開した時に現れる係数は非負整数であることが既に知られており,Stembridge係数と呼ばれているが,その表を行列の形に書いたものと,対称群の標数2のモジュラー表現論に現れる分解行列との類似性に気がついた.互いに「列基本変形」で移り合うことを証明し,単因子がカルタン行列のそれと一致することを見た.さらに対称函数の空間の「混合基底」を導入し,シューア函数をこの混合基底で展開した時の係数が整数になることを発見した.この基底は以前から「長方形のジユーア函数」に付随して調べて来たアフィンリー環の表現論と密接に関係しており,私にとっては極めて自然な着想であった.現在ではまだ標数2に対応する場合しか得られていないが一般の標数でも同様の混合基底の存在が期待される.シューア函数と混合基底,二つの基底の間の変換行列を問題にした.変換行列を自身の転置を掛け合わせることによりカルタン行列と類似の行列が登場するが,その行列式および単因子について,それらが2の冪になるという,非自明な結果を得た.
確率モデルのスケーリング極限の観点から見た対称群の表現の漸近理論の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
洞 彰人, 山田 裕文, 村井 浄信, 佐々木 徹
2004年 - 2006年
課題番号:16540154
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
対称群やそれに類似した離散群の表現におけるいろいろな特性量が群のサイズを大きくするにつれてどのような漸近挙動を示し、極限の描像として何が浮かび上がってくるかについて、確率論や統計力学におけるスケーリング極限の観点からアプローチを行うのが、本研究の全体的な主旨であった。量子、確率論の極限定理の方法を有効に活用することと、自由確率論やランダム行列とのつながりを重視することは、本研究の特徴と言える。具体的な成果の概要を列挙する。
1.グラフの次数と温度がある種のスケーリングを保ちながら変化する低温・無限体積極限において、ギッブス状態に関するラプラシアンのスペクトル分布の研究を行った。相互作用フォック空間上の生成・消滅作用素を用いた量子中心極限定理の定式化によって、漸近的なふるまいを詳しく計算した。
2.ユツィス・マーフィー元のモーメントの組合せ論的な特性を深く追究した解析を行い、リトルウッド・リチャードソン係数など対称群の表現の既約分解から生じるものを始めとして、ヤング図形から成るさまざまな統計集団(アンサンブル)における集中現象を統一的に理解する見方を得た。それは、ある種のヤンググラフ上のランダムウォークの性質に多くが帰着される。ここでも量子確率論の手法を積極的に活用した。
3.研究協力者である平井武氏、および平井悦子氏との共同研究により、コンパクト群の無限対称群との環積の指標を行列要素として表す良い因子表現を構成した。この表現は、一般的なゲルファント・ライコフ表現の枠組を超えて、指標を特徴づけるパラメータの性質が直接反映されるものになっている。
直既約加群のモデュライの構成と加群の退化の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
吉野 雄二, 山田 裕史, 中村 博昭, 平野 康之, 土井 幸雄, 宮崎 充弘, 伊山 修
2003年 - 2006年
課題番号:15340010
配分額:10700000円 ( 直接経費:10700000円 )
一般の三角圏における直既約対象の同型類の集合へのbraid群の作用としてmutationを定義し、これに関する一般論を構築し、それをrigid Cohen-Macaulay加群の分類に応用した。とくに、3次元3次のベロネーゼ部分環上のrigidな極大Cohen-Macaulay加群の完全な分類がこれによって完成した。そのほか種々の分類可能なrigid Cohen-Macaulay加群の例が一連の考察により得られた。これらは極大Cohen-Macaulay加群の安定圏における極大直交部分圏を考察することで得られる。導来圏における同種の問題は現在も研究が進行中である。また、rigidな加群についての一般的考察から、加群の変形および退化の理論についての詳しい考察がなされた。とくに、加群の変形理論の一般化として、非可換なパラメータ空間を有する普遍変形族の構成に成功し、従前の変形理論における障害理論を非可換な普遍変形族を使って解釈しなおすことができることがわかった。この非可換変形理論については研究を続行中である。
モジュライ空間の算術幾何に対する種種のグラフ複合体の関与の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
中村 博昭, 山田 裕史, 吉野 雄二, 田中 克己, 勝田 篤, 廣川 真男
2004年 - 2005年
課題番号:15654007
配分額:3200000円 ( 直接経費:3200000円 )
昨年度に赤澤尋樹氏が行ったグラスマン代数のある商代数にあらわれる斜交表現の不変式のなす環の三叉グラフの生成関係式をつかった表示の研究に基づいて,研究代表者が過去に米国のガロウファリディス教授との共同研究のなかで,より立ち入った議論を必要とする部分について簡単なまとめを行った.
長年の懸案であるモーデル型の楕円曲線の1パラメータ族についてGrothendieck-Teichmueller理論で有用なものの探索を引き続いて精力的に行ったが,残念ながらまだ十分に議論が展開できていない.一方でグロタンディーク・デッサンに付随する代数曲線の不変量の計算法について,主に三角群に付随して注目に値する実例について保型関数との関連で議論を進め,いくつか注目に値する知見を深めることが出来た.
6月には,カリフォルニア工芸州立大学の加藤五郎氏の岡山来訪を実現し,物質,空間,時間の前層化に基づく氏による非常に前衛的な理論に関する講演"Extension Type Yoneda Lemma for Relativistic t-Topos"を通して数理物理におけるカテゴリー理論の可能性について知見を深めた.
研究分担者には、それぞれの専門の立場から研究課題に関連する内容の発展について協力を頂いていた.特に田中克己助教授には,国内出張を通して,情報収集に協力していただいた.
また本研究課題と関連する必要な図書備品・消耗品の購入を通して,各分担者の研究活動を支援した.
遠アーベル幾何におけるガロア群と基本群
日本学術振興会 科学研究費助成事業
中村 博昭, 山田 裕史, 吉野 雄二, 田中 克己, 勝田 篤, 廣川 真男
2002年 - 2005年
課題番号:14340017
配分額:10000000円 ( 直接経費:10000000円 )
楕円曲線の普遍族に関するモノドロミー表現のメタアーベル商を記述する測度関数を考察し、アイゼンシュタイン級数の周期関数としてあらわれる一般化されたデデキント和との関連を明らかにした。特にウェイトを動かすときの測度関数のモーメント積分を詳細に記述するための合同式を証明した。グロタンディーク・タイヒミュラー群の中で絶対ガロア群の像がみたすパラメーターたちが満たす方程式の研究にとりくみ、種数0の非ガロア的な被覆関数を考察することで、今まで知られていない型の方程式を一つ発見した。マグナス・ガスナー型の表現を利用するという新しい着想に基づいてアデール的ベータ関数を用いた2変数位相行列環の中で成立する方程式も見出した。
上智大学の角皆宏氏との共同研究の中でレムニスケート楕円曲線のグロタンディーク・デッサンとしての位置づけを用いて、ガロア群のグロタンディーク・タイヒミュラー群の中での振る舞いを研究し、有用な4次方程式の1-パラメータ族を用いて、標準パラメーターの調和パラメーターへの分解の行列群への特殊化をアデール的ベータ関数の言葉で記述した。
P.Lochak, L.Schnepsとの共同研究として、射影直線の5点配置空間における5次巡回点から最大退化点までの位相的な標準経路を、ガロア群の作用を書き下すことのできる代数的な経路で置き換え、ガロア群のグロタンディーク・タイヒミュラー群における像に対応するパラメーターが球面組紐群の中で5等分割される詳細な様子を完全に記述した。
組紐群へのガロア群の作用を記述する伊原・松本の論文の手法を,Gerritzen-Herrlich-Putによる種数0の標点つき射影直線のモジュライ空間の安定コンパクト化の論文と比較して,モジュライ理論としてより自然な解釈を与えた。
ニース大学のWojtkowiak教授のもとを訪れ,共同研究課題であるエル進多重反復積分について現状の確認と今後の研究の進め方について新たな方向性を得た.
シューア函数を軸にした組合せ論的表現論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 吉野 雄二, 中村 博昭, 平野 康之, 田中 克己, 池田 岳
2003年 - 2004年
課題番号:15540030
配分額:2900000円 ( 直接経費:2900000円 )
表現論に現れるシューア函数,およびその射影的類似物であるシューアのQ函数について認識を深めた.平成15年度は,アフィンリー環D^{(2)}_2の基本表現の斉次実現のウエイトベクトルとして長方形のヤング図形に付随するシューア函数をとることができ,それは非線型シュレーディンガー方程式系の斉次τ函数を与えることを厳密に証明した.基本的なアイデアとしては表現空間,作用素などをすべてフェルミオンのことばで書き下し,ボゾン・フェルミオン対応で具体的な多項式を導出する,というものである.また今一つのアフィンリー環A^{(2)}_2の基本表現についても同様の考察が可能である.平成16年度は2被約シューア函数をシューアのQ函数で展開したときの係数についてその性質を詳しく調べることを問題とした.5月に次数が小さい場合に実験的にいくつか計算してみたところ,著しい特徴があることに気がついた.まず登場するすべての係数が非負整数であること,係数をある仕方で行列の形に書いてみると,その行列がいわゆる「強下三角」になっていること,などである.表現論において非負整数が登場すればそれは何らかの「物の個数」を勘定しているのではないかと予想される.大学院生の青影一哉と一緒に更に詳しく調べたところ,我々の係数は「スチンブリッジ係数」と呼ばれているものに一致していることを見出した.ステンブリッジは全く別の文脈からこの係数にたどり着き,その組合せ論的な記述,すなわち「物の個数」としての素性も明らかにしていたのだが,それが2被約シューア函数とQ函数の関係となって姿を現わしたのである.これに関連して対称群の「カルタン行列」の単因子を与える簡明な公式を見出した.10年以上前にコペンハーゲンのオルソンが公式を発見したが,それは母函数を用いる煩雑なものであった.我々の公式は,ヤング図形の長さから直ちにわかる直接的なものである.
群論とカテゴリー論から見た母関数の理論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
吉田 知行, 吉田 知行, 山下 博, 松下 大介, 竹ヶ原 裕元, 山田 裕史, 八牧 宏美
2001年 - 2004年
課題番号:13440001
配分額:12800000円 ( 直接経費:12800000円 )
1.群準同型写像の個数に関する浅井・吉田の予想.p進解析学との関連の発見(吉田,竹ヶ原,K.Conradなど).村瀬(UCSD)によって量子場の理論から重要性が指摘されていたコンパクトリーマン面の基本群からの準同型写像については,精密な形での予想の解決(吉田).
2.斜バーンサイド環の理論の基礎理論の完成(吉田・小田).
3.有限群のコホモロジー論.ホッホシルドコホモロジーと斜マッキー関手,quantum doubleの関係の新しい結果と相互の関係の解明(佐々木,吉田,小田).
4.組合せ論との関係.デザイン,距離正則グラフ,符号理論の周辺でのあらたな結果,特に環上の符号の研究へのホモロジー代数の応用など(吉田・坂内・城本啓介).
5.有限群のモジュラ表現.特に,特別の不足群を持つ群に対するBroue予想の肯定的解決(越谷).
6.周辺分野(代数幾何,表現論)での興味ある発見,特に有限単純群との関係(中村,山下).
7.その他.海外から3人の研究者を招聘した.
・平成13年 FAN Yun (武漢大学,有限群のモジュラ表現)Boue conjecture関連の講演(九大).
・平成15年 K.Corad (Conneticut大,表現論など)p-進解析,整数論関係の講演(北大,京大).
・平成16年 S.Bouc (CNRS,有限群のモジュラ表現).Dade群とBurnside環(北大,京大).
本研究の成果のかなりの部分が印刷公表されている.それ以外も順次出版公表の予定である.
代表者の主催した「母関数とその周辺」(平成14年1月),「第20回代数的組合せ論シンポジウム」(平成15年7月),「拡大群論セミナー」(北大,平成16年12月,平成14年11月)や分担者などの主催した研究集会で,代表者と分担者は成果を発表してきた.
量子論に現れるハミルトニアンの特異性に関する作用素解析的研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
廣川 真男, 田村 英男, 佐藤 亮太郎, 田中 克己, 廣島 文生, 山田 裕史
2001年 - 2003年
課題番号:13640215
配分額:2900000円 ( 直接経費:2900000円 )
非相対論的量子電磁気学において、非相対論的に捉えた電子と量子化された電磁場を記述する模型(具体的には水素様イオン等を記述する数学的模型)であるPauli-Fierz模型にいくつかの物理的近似を施したNelson模型に対して、実際の量子電磁気学において原子の構造に現れるCoulombポテンシャルを持つ場合にNelson模型で赤外発散が起こることを証明し、さらに、この証明方法から赤外特異条件が赤外発散をもたらしたりもたらさなかったりする数学的メカニズムをCarleman作用素で特徴付けた。また、数理物理学でよく使われる有用なpull-through公式に対する作用素論における厳密な証明は本研究以前まで与えられていなかったが、本研究の結果として初めてこの証明を与えた。この証明を得ることで上述のCarleman作用素が定義可能となった。赤外発散が起こる数学的メカニズムは、このCarleman作用素の定義域とpull-through公式を詳しく調べることによりなされた。上述の研究結果により、Nelson模型に対しては赤外発散が起こるので、基底状態が存在しない状態空間を記述するFock表現から、実際の物理を記述し基底状態の存在する状態空間の表現への移行を行った。その表現上で赤外切断、さらには、紫外切断の両切断を取り除いた模型を構成し、さらに、その模型が基底状態を持つことを作用素解析的に証明した。
2次元空間上を動く相対論的粒子が特異性を持つAharonov-Bohm磁場と相互作用するハミルトニアンのノルム・レゾルベント収束を調べ、特異点における境界条件に付随する自己共役拡張に対して、どの自己共役拡張が実際の物理に適した表現であるかを調べた。
モジュライ空間の幾何学の総合的な研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
中村 郁, 桂 利行, 筱田 健一, 諏訪 立雄, 中島 啓, 斉藤 政彦, 松本 圭司, 小野 薫, 山田 裕史, 島田 伊知朗, 臼井 三平, 山下 博, 江口 徹
2000年 - 2003年
課題番号:12304001
配分額:29930000円 ( 直接経費:24800000円 、 間接経費:5130000円 )
本研究では,モジュライ空間とそのコンパクト化の研究および,ある特定の代数多様体をある別の幾何学的な対象のモジュラィ空間と同一視してその立場から,その代数多様体を研究することを目標とした。具体的には以下のような問題を考察することを目標とした:(a)商特異点C^3/Gの特異点解消のモジュライ空間としての研究,構造の決定.(b)Kempf安定性によるモジュライのコンパクト化の構成.(c)アーベル多様体のモジュライ空間A_<g,N>のZ[1/N]上の自然なコンパクト化SQ_<g,N>および関連するモジュライ空間の研究.そのおのおのについて相当程度の成果が得られた.
おもなものは二つある.その第一は,Hilbert scheme of G-orbitsの研究であり,単純特異点のMcKay対応とよばれる20年以上も前から知られる現象に新しい説明を与え,さらに3次元に拡張して多くの新しい問題を提起し,多くの新しい成果を得たことである.とりわけ3次元ないし高次元への拡張は,研究代表者のアイデアによって研究の方向が提唱され,多くの関連する研究が続いた.その意味で,McKay対応の研究史における本研究の意義は少なくない.とりわけ,代表者の証明した事実のひとつは,Hilbert scheme of G-orbitsがC^3/Gの極小特異点解消のなかでもっとも自然なものだということである.これは従来の理論にはなかったことであり,代数幾何学における従来の常識を破る性格を持ち,多くの研究者によって驚きをもって迎えられた.もう一つはアーベル多様体のModuli空間A_<g,N>の自然なコンパクト化を構成したことである.このコンパクト化は射影的であり,望ましいコンパクト化の性質を持つ.不変式理論の立場からは,安定性によって簡明にその本質を表現できるという点で,正統な,しかもそのような唯一のコンパクト化である.
表現論的見地からの環論の新展開とその応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業
吉野 雄二, 石川 佳宏, 平野 康之, 山田 裕史, 山形 邦夫, 宮崎 充弘
2001年 - 2002年
課題番号:13640024
配分額:3400000円 ( 直接経費:3400000円 )
本研究で目標の一つとした可換局所環上のCohen-Macaulay加群の分類論に関して、それらの加群の間の退化の問題、及び分類論の一般化としてGorenstein次元0の加群の族に関する性質について大きな進展があった。
(1)退化の問題:一般に、退化の関係で加群の同型類の間には半順序を定義することができる。この半順序関係は、Bongartzが有限次元多元環上の有限次元加群の間に定義したHom orderと密接な関係がある。もし、Cohen-Macaulay加群の圏が有限型であれば、その半順序関係が、実はAuslander-Reiten列の退化によって生成されると予想される。これは退化という極めて幾何学的意味を持つ関係が、実はAuslander-Reiten quiverの組合せ論的性質から容易に計算できると主張するものである。そして、この予想が、局所環の次元が2の場合には、一般に正しいと証明することができた。また、局所環が1次元の時には、その環が整域であるという仮定のもとで、やはりこの予想が正しいと証明することができた。ただし、現時点ではこの予想が3次元以上で正しいかどうかは判明していない。これらの結果は、3次元以上の場合の考察を含めて、Journal of Algebra(2002年)に掲載された。
(2)Gorenstein次元0の加群:Gorenstein環上のCohen-Macaulay加群の分類論の一般化として、一般の局所環上のGorenstein次元が0の加群の分類がある。当所、これらの加群の族についてはCohen-Macaulay加群の族と同様の性質が成立すると考えられていたが、必ずしもそうでないことを例をもって示すことが出来た。とくに、極大イデアルの3乗が0となるようなArtin局所環については、Gorenstein次元が0であるような非自明な加群を持つための必要十分条件を与えることができた。さらに、そのような環については実際に連続パラメーターをもつ直既約加群の同型類の族を具体的に構成して、Gorenstein次元0の加群の族がcontravariantly finiteでないことがありうることを示した。この結果については、NATO Science Program, Advanced Study Workshop(ルーマニア、2002年)において報告を行い、Kluwer出版社から出版の予定である。
超幾何微分方程式系の分類問題
日本学術振興会 科学研究費助成事業
齋藤 睦, 澁川 陽一, 松本 圭司, 山下 博, 和地 輝仁, 山田 裕史, 三宅 敏恒
2000年 - 2001年
課題番号:12640149
配分額:3500000円 ( 直接経費:3500000円 )
コンピュータによる多数の例の計算や、国内外における研究者との交流などにより、以下のような成果を得た。
齋藤睦は、A-超幾何系について研究した。まず、A-超幾何系の分類定理を非斉次のときや、解析的カテゴリーにおいても証明した.また。斉次のときにlog係数を持たないA-超幾何級数からなる空間の次元公式を与え、さらにAの凸包が単体のとき、A-超幾何系のランクの公式を与えた。このとき、さらに全てのパラメータに対してランクが凸包の体積と等しくなるという条件が、Aから決まるトーリック多様体がコーエン-マッコウレイであるという条件と同値であることを示した。
山下博は、Harish-Chandra加群に付随する等方表現に関する一般理論を整備・展開した。特に、等方表現が既約となるのはいつかについて、有用な新知見を得た。さらに、離散系列に属するHarish-Chandra加群について、等方表現の零でない商表現を統一的に構成した。
松本圭司は、n次元複素射影空間上の積分表示をもつ合流型超幾何関数で最も合流が進んだ一般化されたAiry関数に関する捩れコホモロジー群間にあるペアリングを明らかにした。捩れコホモロジー群の基底をヤング図形を用いて定め、その基底に関してできるペアリングをskew-Schur多項式で表示できることを示した。
澁川陽一は、ヤン・バクスター方程式を満たす関数空間上の線型作用素であるR作用素の分類問題を解決した。
山田裕史は、まずいくつかのアフィンリー環の基本表現に関して、そのウエイトベクトルを具体的に求める、という研究を行った。特に一番簡単なアフィンリー環であるA^<(1)>_1に関しては2つの実現を考えウエイトベクトルがそれぞれシューア函数のモジュラー版、シューアのQ-函数で書けることを発見した。
和地輝仁は、一般バーマ加群の構造、特に規約性について、不変式との関連に注目して研究を行った。
四元数型無限次元表現とべき零共役類
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山下 博, 西山 享, 澁川 陽一, 齋藤 睦, 和地 輝仁, 太田 琢也, 山田 裕史
2000年 - 2001年
課題番号:12640001
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
実簡約リー群の無限次元既約表現に付随したハリシュ・チャンドラ加群は,リー代数のべき零共役類からなる随伴多様体を基本不変量にもつ.さらに,随伴多様体の各既約成分の当該加群における重複度は,対応するべき零軌道上の一点の固定部分群の等方(固定)表現の次元として捉えることができる.研究代表者の一連の研究により,多くの場合に,双対ハリシュ・チャンドラ加群を実現する勾配型不変微分作用素の主表象写像を用いて等方表現を記述できることが,原理的には分かっている.本研究では,四元数型無限次元表現,離散系列や最高ウェイト加群など,既約な随伴多様体をもつハリシュ・チャンドラ加群に対する等方表現の研究を開始し,以下に述べる成果を挙げた.
1.随伴サイクルに対するヴォーガン理論を出発点に,等方表現の構造の一般論を展開した.等方表現の既約性に対する判定条件を与え,勾配型微分作用素により等方表現が特定できるのは如何なる場合かを調べた。
2.四元数型を含む一般の離散系列表現について,等方表現の零でない商表現を構成した.この商表現は等方表現のなかで十分大きいと考えられるが,各離散系列加群に対応して定まるテータ安定な放物型部分群が対称対に付随したリチャードゾン型のべき零軌道を持つ場合に、これを支持する定性的な定理を得た.
3.エルミート型リー代数BI, DI, EVIIの特異ユニタリ最高ウェイト加群に対する等方表現を,具体的に特定した.最終的に,任意のエルミート型単純リー代数の特異ユニタリ最高ウェイト加群に付随する等方表現が既約になることを見出した.
4.各研究分担者は本研究に常時参画した.齋藤は,ユニタリ最高ウェイト加群と密接に関わるA-超幾何系の研究を進め,A-超幾何系が斉次の場合にランクの公式を得た.和地は一般バーマ加群上にキャペリ恒等式の類似物を構成した.西山と太田は,それぞれ独自の視点から,対称対に付随するべき零軌道のモーメント写像による対応(双対対に関するテータ・リフト)を与えた.
超平面配置の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
寺尾 宏明, 徳永 浩雄, 川崎 健, 岡 睦雄, 中村 憲, 中島 徹, 竹田 雄一郎, 山田 裕史
1999年 - 2001年
課題番号:11440012
配分額:10600000円 ( 直接経費:10600000円 )
平成13年度には、以下の2つの大きな研究成果をあげることができた。
1.コセクター配置に多重に接触するベクトル場のなす加群に自然な基底が存在することを示し、しかも、その基底が軌道空間の平坦構造と深くかかわることを示した。
具体的には、接触度から決定されるフィルトレーションが、ホッジフィルトレーションとレヴィ=チヴィタ接続で連関していることを示した。
2.1次式の逆数で生成される環の微分加群としての構造を決定し、特にそのポアンカレ級数の公式をえた。(J.of Algebraに掲載予定)さらに、多項式環に1次式の逆数を付加した環について、2変数ポアンカレ級数の込み合わせ的公式をもうることができた。
アフィンリー環と対称群の組合せ論的表現論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 田口 雄一郎, 斎藤 睦, 山下 博, 中島 達洋, 渋川 陽一
1999年 - 2000年
課題番号:11640001
配分額:3600000円 ( 直接経費:3600000円 )
山田は,まずいくつかのアフィンリー環の基本表現に関して,そのウエイトベクトルを具体的に求める,という研究を行った.特に一番簡単なアフィンリー環であるA^<(1)>_1に関しては2つの実現を考えウエイトベクトルがそれぞれシューア函数のモジュラー版,シューアのQ-函数で書けることを発見した.これら2つの実現を詳しく解析することにより,対称群のスピン分解行列の単因子について興味深い事実を見い出した.すなわち対称群の標数2の場合のスピン分解行列の単因子がすべて2の冪になっている,ということである.対称群のモジュラー表現の一般論を用いても証明できるが,その後,アフィンリー環論を用いた簡明な証明を発見した.単因子が2の冪ということだけではなく,その指数の出方についても詳しく知ることができるのではないか,と模索している.
ジャック多項式の特殊化である帯多項式の研究過程において,対称群の指標表にちょっと不思議な現象があることを発見した.実はこの現象は50年前にリトルウッドによって証明されていることを知るのだが,彼の元々の証明は煩雑を極める.そこで大学院生の水川裕司とともにその簡明な証明を与えた.同様の現象が対称群のスピン指標表においても見つかっており,その証明も与えられた.通常の指標ではシューア函数の表示が本質的に用いられるがスピンの場合はQ-函数のパフィアン表示が必要となる.
池田岳との共同研究でアフィンリー環A^<(1)>_1の基本表現の斉次実現を詳しく考察して非線型シュレディンガー方程式系の斉重多項式解のすべてを求めることができた.長方形のヤング図形に付随するシューア函数が本質的に登場する.現在論文を準備中であり,また一般のアフィンリー環への拡張を模索中である.
古典群・量子群の表現論に現れる組合せ論とその応用
日本学術振興会 科学研究費助成事業
岡田 聡一, 山田 裕史, 小池 和彦, 柏原 正樹, 寺田 至
1998年 - 2000年
課題番号:10440004
配分額:12900000円 ( 直接経費:12900000円 )
この研究では,古典群,量子群やWeyl群,Hecke環などの表現論と組合せ論との境界領域において,次のような成果を得た.
1.岡田は,最高ウェイトが長方形,またはそれに近いYoung図形に対応する古典群の既約表現に対して,それらのテンソル積,部分群への制限の分解などを具体的に与える公式を得た.また,対称性をもつalternating sign matrixの個数,対応するsquare ice modelの分配関数が,それぞれ古典群の既約表現の次元,指標で与えられることを,証明(予想)した.
2.柏原は,量子群U_q(gl(m,n))のcrystal baseを導入し,Young盤を用いて組合せ論的に記述した(G.Benkart,S.Kangとの共同研究).また,旗多様体上のD加群を研究し,affine Lie環に対するKazhdan-Lusztig予想をnon-critaical levelの場合に完全に解決する(谷崎俊之との共同研究)とともに,旗多様体上のD-加群の双対性がHarish-Chandra加群の双対性に対応していることを示した(D.Barletと共同研究).
3.小池は,自然表現のテンソル積表現と基本スピン表現のテンソル積におけるスピン群の中心化環の構造を一般化されたBrauer図形を用いて決定し,このテンソル積の中にスピン群の既約スピン表現を構成した.
4.寺田は,Brauer diagramとupdown tableauを対応させるRobinson-Schensted型対応に対して,Steinberg流の幾何学的な意味付けを与えた.また,sp(2n)のWeil表現のテンソル積の分解を与えるRobinson-Schensted型対応を構成した(T.Robyとの共同研究).
5.山田は,いくつかのaffine Lie環の基本表現のウェイトベクトルを対称関数を用いて具体的に決定し(中島達洋との共同研究),その応用として対称群のスピン分解行列の単因子に関する興味深い事実を発見した.また,対称群のスピン既約指標に対するLittlewoodの倍数公式を得た(水川裕司との共同研究).
表現論の代数解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業
柏原 正樹, 西山 亨, 行者 明彦, 三輪 哲二, 岡田 聡一, 黒木 玄, 寺田 至, 小池 和彦, 山田 裕史, 谷崎 俊之, 中島 俊樹, 中屋敷 厚, 織田 孝幸
1997年 - 2000年
課題番号:09304003
配分額:25700000円 ( 直接経費:25700000円 )
この科研費による計画においては、リー群・量子群・へッケ環などの表現論を数理物理学・組合わせ論との関係から研究した。
以下、各年次における活動を記す。
初年度(1997)においては、特にRIMS project1997(等質空間上の解析とLie群の表現)とタイアップして計画を遂行した。このプロジェクト研究では、等質空間という幾何的観点にたった実Lie群の表現の研究に焦点をあてた。海外からのべ約40名の参加者があり国際的な共同研究・研究交流の場が提供できた。この成果は、Advanced Studies in Pure Mathematics,vol.26に発表された。
1998年は、RIMS project 1998(表現論における組合わせ論的方法)とタイアップして計画を遂行した。このプロジェクト研究では、海外からのべ約25名の参加者があり、量子群・アフィンへッケ環の表現論と組合わせ論を中心にして計画を行った。
1999年は、国際高等研究所と数理解析研究所において"Physical Combinatorics"の国際シンポジュウムを開催し、数理物理と関連して研究を行った。量子群の表現論、Kniznik-Zamolodhikov方程式とそのq-変形の解の性質や共形場理論の研究を推進した。その成果は、"Physical Combinatorics,Progress in Math,vol.191,Birkhauserに発表された。
2000年度は、計画の最終年として"数理物理における表現論および代数解析的方法の応用"を中心とする研究成果の発表を目的として、"Mathphys-Odyssey 2001"という国際シンポジュウムを開催した。この会議録は、Birkhauser出版から出版される予定である。
超幾何微分方程式系の代数解析的・表現論的研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
齋藤 睦, 渋川 陽一, 山下 博, 山田 裕史
1998年 - 1999年
課題番号:10640146
配分額:3000000円 ( 直接経費:3000000円 )
コンピュータによる多数の例の計算や、国内外における研究者との交流などにより、以下のような成果を得た。
齋藤睦は、A-超幾何系について研究した。まず、B.Sturmfels氏、高山信毅氏と共同で、A-超幾何系と整数計画法との関連について研究した。さらに、両氏と共同で、D-加群のグレブナー変形について研究し、それをA-超幾何系の研究に応用した。正則ホロノミック系のランク(解空間の次元)がグレブナー変形で不変であることを示し、A-超幾何系のランクがAの成す凸包の体積に等しくなるための具体的な十分条件を与えた。また、A-超幾何系のパラメータを対応するA-超幾何系のD-加群としての同型類で分類するという問題に対して組合せ論的解答を得た。
山田裕史は、Q-函数とアフィンリー環との関係について研究した。Q-函数を冪和対称函数たちの多項式として表示したものはあるアフィンリー環の基本表現を多項式環上に実現したときのウエイトベクトルになることを見出し、そのQ-函数のウエイトをYoung図形を用いて明示した。また、SchurのS-函数とQ-函数との一見奇妙な関係を発見した。
山下博は、Harish-Chandra加群に関して研究した。まず、Borel-de Siebenthal離散系列の主系列表現への埋め込みを特定した。また、離散系列、ユニタリ最高ウェイト表現について、その随伴サイクルが、双対Harish-Chandra加群を核空間として実現する勾配型不変微分作用素の主表象写像を用いて記述できることを明らかにした。
渋川陽一は、河澄響矢氏と共同でRuijsenaars-Schneiderのdynamicalな可積分系のLax表示に関連するBruschi-Calogeroの微分方程式の全ての有理型関数解を求めた。
対称空間上の勾配型不変微分作用素とリー代数の表現
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山下 博, 澁川 陽一, 齋藤 睦, 山田 裕史, 西山 享, 平井 武
1997年 - 1999年
課題番号:09440002
配分額:13900000円 ( 直接経費:13900000円 )
「実半単純リー群Gの無限次元既約表現の誘導加群への埋込み(模型)が,リーマン対称空間X=K\G上の勾配型不変微分作用素族が定める微分方程式系の誘導加群の関数空間における解により特徴づけられる」という核型定理をもとに,各既約表現(Harish-Chandra加群)について,種々の模型を記述することを目標にした研究を実施し,次の成果を得た.
1.エルミート型単純群Gの最高ウェイトをもつ既約Harish-Chandra加群Lから,K\Gの正則接空間に含まれるリー代数のべき零軌道たちO_m(m=0,1,…,r)に付随した「一般化Gelfand-Graev誘導表現」Γ_mへの埋込み:一般化Whitta ker模型,を決定した.表現Lの随伴多様体はあるべき零K_<C->軌道O_<m(L)>(K_Cは極大コンパクト群Kの複素化)の閉包と一致する.表現LのΓ_<m(L)>への埋込みが勾配型微分作用素の主表現を用いてテ特定される.古典群の場合には,簡約相対対のoscillator表現を用いて,より具体的な結果を得た.
2.四元数型単純リー群のBorel-de Siebenthal離散系列表現について,Schmid-勾配型微分方程式を主系列の表現空間において解くことにより,0次n-ホモロジー空間を特定した.
3.既約な髄伴多様体をもつHarish-Chandra加群について,ある種の代数的な仮定のもとに,その随伴サイクルに現れる「重複度」を,双対Harish-Chandra加群を実現する勾配型不変微分作用素の主表象写像を用いて記述する一般理論を構築した.
4.各研究分担者は,表現論と微分方程式(齋藤・佐藤),表現と相互律(平井・西山・山田),保型形式と整数論(田口・三宅・前田)量子群や無限次元リー代数の表現(須藤・内藤・澁川・吉田)の研究を各自押し進めると同時に,これらの研究が深く関わる上記の研究過程で,セミナーや討論をとおして本研究に常時参加した.
高次元カテゴリー論による群の表現論の基礎付け
日本学術振興会 科学研究費助成事業
吉田 知行, 山田 裕史, 辻下 徹, 和久井 道久, 丹原 大介, 奥山 哲郎
1997年 - 1998年
課題番号:09874001
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
高次元カテゴリーに関係したいくつかの成果が得られた。主なものをあげる。
1. カテゴリーの母関数。カテゴリーεの母関数とは、形式的無限和ε(t)=Σ_<X∈ε>t^X/|Aut(X)|のことである。ここでt^Xは、対象Xの同型類に対応した不定元である。これについて、以下の結果を得た。
(1) Joyalによる種の理論との関係。
(2) εが強いKrull-Schmidtカテゴリー(つまり直和分解の一意性が成立する)なら、指数関数型恒等式
ε(∪)=exp(Con(ε)(∪))
が成り立つ。
(3) 逆に、指数関数型恒等式が成り立てば、若干の条件の下でεが強いKrull-Schmidtカテゴリーになる。これらの結果は、北大のプレプリント(1998#416,432、いずれもJ.Algebraに投稿中)に見られる:T.Yoshida,Categorical aspects of generating functions(I) :Exponential formulas,(II)Operations on categories and functors.
2. クロスバーンサイド環。Gを有限群、Sを有限G-モノイドとする。クロスG集合とは、Sへの重み関数をともなう有限G-集合のことである。クロスG-集合については、テンソル積が定義できる。したがって、クロスG-集合のグロタンディエック環(クロスバーンサイド環)が定義できる。これについて、以下の結果が得られた。
(1) クロスG-集合とDrinreldによるquarltum doubleとの関係。
(2) クロスバーンサイド環の基本定理。
(3) ベキ等元公式とその応用。
これらの結果は、次の論文に公表予定(J.Algebraに投稿)である:
F.Oda-T.Yoshida,Crossed Burnside rings(I),(II).そのほか、マッキー関手や、群論の古典的問題に関係したいくつかの結果が得られており、順次論文として公表予定である。
群、環の表現論とその組み合わせ論的側面
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史, 中島 達洋, 寺尾 宏明, 渋川 陽一, 斉藤 睦, 山下 博
1997年 - 1998年
課題番号:09640001
配分額:2400000円 ( 直接経費:2400000円 )
Q-函数とアフィンリー環との関係について研究を進めた.まずQ-函数を幕和対称函数たちの多項式として表示したものはあるアフィンリー環の基本表現を多項式環上に実現したときのウェイトベクトルになることを見出した.一般にQ-函数はヤング図形で添字づけられるが,与えられたQ-函数がどのウェイト空間に属するかを,ヤング図形の組合せ論を用いて明らかにした.またこの処方箋を別の最も簡単なアフィンリー環に適用することにより,シューアのS-函数とQ-函数との間の一見奇妙な関係を発見した.対称群のスピンモジュラー表現の観点から眺めることにより,スピン分解行列を通してその意味が明らかになった.この事実が発端となってスピン分解行列そのものを研究対象とみなし始めた.標数2の場合のスピン分解行列は正方行列になるがその行列式が2のべキになっていることを証明した.もう一つの研究成果としては複素鏡映群G(r,p,n)の「高次シュペヒト多項式」の構成がある.群G(r,p,n)は自然にn変数の多項式環に作用するがその基本不変式で生成されるイデアルによる剰余環は『余不変式環』とよばれる.余不変式環におけるG(r,p.n)の表現は正則表現に同値であるが各既約成分の基底を多項式として具体的に書いたものが高次シュぺヒト多項式である.対称群S_n=G(1,1,n)の場合から始めて徐々に一般化を進めてきたがようやく広いクラスの群G(r,p,n)まで到達できた.
実半単純リー群の表現とベき零軌道のケーリ-型変換
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山下 博, 平井 武, 本多 尚文, 山田 裕史, 齊藤 睦
1996年 - 1996年
課題番号:08640001
配分額:2500000円 ( 直接経費:2500000円 )
1.実半単純リー群Gの表現,より正確には、表現を微分して得られる展開環U(g)上のHarish-Chandra加群Hの随伴多様体ν(H)は、Riemann対称対(G,K)を複素化して得られる対(G_C, K_C)の接空間pにおけるべき零K_<C->軌道からなる。研究代表者は、「各K_<C->軌道O⊂ν(H)からケーリ-型変換と偏極化をとおしてH上に局所自由に作用するべき零部分環(群)n_oの存在」を示した昨年度からの研究を押しすすめ、Hが規約最高ウェイト表現の場合に、対応するべき零部分環n_oの具体的記述を与えた。この一連の研究結果をとりまとめた論文を日本数学会および数理解析研究所共同研究集会で口頭発表し、学会雑誌へ投稿した(京大行者明彦氏との共著)。
2.半単純リー群Gの極小べき零共役類に付随した極小ユニタリ表現H_mは、既約ユニタリ表現の分類問題とも深く関わる重要な表現である。(1)の成果をふまえて、G=SU(n,n)の極小表現Hmの一般化されたホイッタッカー模型を、HmをG/K上で実現するG_-不変な2階偏微分方程式系を用いて決定した(論文準備中)。さらに、極小表現のフォック模型を使って、U(n_o)-加群としてのHmの構造を明らかにした。この結果を任意の最高ウェイト加群に拡張することを目標とした研究を現在実施中である。
3.各研究分担者は、ホロノミックな不確定特異点型微分方程式系(本多)、多変数超幾何方程式(齊藤)、あるいは各種の群の表現に対するシューア・ワイルの相互律の研究(平井・山田)を各自押しすすめると同時に、これらののテーマが深く関わる上記2の研究実施の過程で、個人的な討論やセミナーをとおして本研究に常時参加した。
群論の古典的問題
日本学術振興会 科学研究費助成事業
吉田 知行, 坂内 英一, 辻下 徹, 山田 裕史, 中村 郁, 斉藤 睦
1996年 - 1996年
課題番号:08454001
配分額:5200000円 ( 直接経費:5200000円 )
本研究の目的は群論における古典的問題であった。この研究課題について、研究代表者と分担者は以下のような研究成果を得た。研究成果は順次整理公表の予定である。
1:有限群のcrossed Burnside環についての成果として、(a)群環のQuantum doubleとの関係の発見、(b)基本定理(群環の直積への埋め込み)の証明、(c)ベキ等元公式とその群論の古典的問題への応用。これらは、プレプリント(Crossed G-sets and crossed Burnside rings)としてまとめられている。また内外の研究集会(7月シアトル、8月山形、8月草津など)でも発表した。
2:位相的量子場の理論との関係については、Dijkgraaf-Witten不変量が、ある程度整数に近いことを、いくつかの場合に確かめた。例えば多様体が3次元トーラスの場合、確かに整数である。またゲージ群が巡回群の場合にもやや弱い結果があるが、当初の予想が成り立たず、若干の訂正が必要であった。これらについては、山形での代数学シンポジウムの報告集にある。
3:Schur関数に関する多くの結果が得られた。特にreduced Schur関数とaffine Lie algebraとの深い関連を発見した。これらは、ミネアポリスでの組合せ論の研究集会で発表した。
4:その他分担者は、環論、実代数幾何、モノイダルカテゴリー論(2月熊本で発表)、力学系の直観主義論理の関係(7月札幌で発表)といった分野でも多くの成果を得ている。
5:設備備品費で購入したワークステーションとノートパソコンは、数式処理システム(Mathematica,GAP)を動かすのに使用した。
ワイル群とヘッケ環の表現論
日本学術振興会 科学研究費助成事業
山田 裕史
1996年 - 1996年
課題番号:08211257
配分額:1000000円 ( 直接経費:1000000円 )
複素鏡映群の大きな系列の一つであるG(r,p,n)についてその"高次Specht多項式"の構成を行った.
古典的Weyl群を包括する複素鏡映群としてG(r,p,n)というシリーズがある.この群はn変数の多項式環pに自然に作用する.そのとき基本不変式で生成されるイデアルJによる剰余環R=P/JはG=G(r,p,n)の"余不変式環"とよばれ表現としては正則表現と同値であることが知られている.余不変式環RはGがWeyl群のとき,対応する代数群の旗多様体のコホモロジー環と同型であることから幾何学的にも非常に重要な対象である.そこでRの各既約成分をその基底もふくめて具体的に多項式として記述するということが問題となる.私は投稿中の共著論文"Higher Specht polynomials for complex reflection group G(r,p,n)"においてこの問題を解決した.G(r,p,n)の既約表現Young図形で統制さるのでその組合せ論を援用して,初等的に計算可能な形で基底が記述される.今後のG(r,p,n)のモジュラー表現などの研究において大きな役割を果たすものと信ずる.
なおこの結果は96年の日本数学会秋季総合分科会において口頭発表された.また97年にウイーンで開催される国際会議"Formal Power Series and Algebraic Combinatorics"でも発表予定である.
非線形波動現象の解析
日本学術振興会 科学研究費助成事業
望月 清, 松井 卓, 山田 裕史, 青木 統夫, 富山 淳, 酒井 良
1993年 - 1993年
課題番号:05640210
配分額:2000000円 ( 直接経費:2000000円 )
代表者の行った研究を中心に述べる。これは2つあり,対流項をもつ準線形放物型方程式の解の爆発問題と半線形波動方程式の散乱問題である。前者は都立航空高工専の鈴木龍一等との共同研究であり,まず解の爆発と大域存在を分ける非線形項と初期データの条件を定め,次に爆発解の爆発時刻での漸近挙動,特に一点爆発が起る場合について,対流項が与える影響をしらべた。後者は北海道大理学部の久保田幸次との共同研究であり,空間2時元の問題に対してオプティマルな結果を与えた。小さな初期データに対して大域解の存在条件は知られていたが,その解が散乱状況にあり,自由な波動方程式の解との対応で散乱作用素の存在を示すことが未解決で残されていた。この論文ではそれを肯定的に解決した。これらの他にも代表者は非線形波動現象に関する新しい結果をいくつか得ており,口答発表をしている。これらは漸次論文として発表する予定である。
分担者の行った研究は多く,全てを研究発表のリストにあげることができない。またその内容についてくわしく述べる余裕はないが,例えば酒井良の論文では2次元求積領域の境界の正規性をポテンシャル論を用いて示しており,西岡國雄の論文ではP-放物型方程式に対し,初期データと係数が共鳴を起す場合に解の漸近挙動をしらべている。
リストにはあげてないが山田裕史の50ページになる論文も発表されており,(Japanese Jiurnal of Math),全体として科学研究費(一般C)の上記研究課題は達成できたと考えている。
代数多様体の積分周期及びその有限体上での類似
日本学術振興会 科学研究費助成事業
寺杣 友秀, 蔵野 和彦, 山田 裕矢, 卜部 東介, 中村 憲, 笹倉 頌夫
1993年 - 1993年
課題番号:05640054
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
昨年における研究計画にあげた課題において、今年は特に代数的サイクルに関連する部分、合流型超幾何関の行列式について、進展を見た。代数的サイクルについてはゲルファント,カプラノフ,ゼレビンスキーによる超幾何関数の級数表示から由来する関係式に関して、これらの例について特に研究を行なった。それらの関係式が代数的対応により由来することがわかった。現在この方向での一般化について、トーラス埋め込みの言葉で整理中である。2つ目の合流型超幾何関数の行列式については斉藤恭司氏によって研究されていたオシラトリー積分と関連をもち、さらに、ヘシアン行列式によりexplicitな表示を持つことが示された。オシラトリー積分についても、今後の研究課題である。
位相力学系論とC環論の相互作用の研究
日本学術振興会 科学研究費助成事業
富山 淳, 山田 裕史, 高井 博司, 山下 愼二, 酒井 良, 青木 統夫
1992年 - 1992年
課題番号:04640180
配分額:1700000円 ( 直接経費:1700000円 )
Σ=(X,σ)をコンパクト空間Xとその位相図型σよりなる位相力学系とする。本年度は富山が韓国ソウル大の集中講義において位相的に自由な作用をもつ力学系の基本性質を示した。そしてその土台の上に青木-富山はΣに附随すする位相変換群C^*環A(Σ)の性質とΣの基本集合との関係について本年の研究課題に大きな前進を見出した。Por(σ)をΣの周期点またL(σ)をΣの再帰点全体の集合とする。Xをコンパクト距離空間とする。 定理1A(Σ)がI型のC^*環であることとC(σ)=Per(σ)、すなわち再帰点はすベて周期点であることは同値である。 定理2A(Σ)がI型の部分を持たないことすなわちantiliminalなことと、集合L(σ)\Per(σ)がXで稠密なことは同値である。
従来A(Σ)がいつI型のC^*環になるかについては色々な研究があったがそれらは測度力学系を規範としているために古典的な例も排助するような作用の仮定をおいたりまた結果ののべ方が軌道空間を用いるなど力学系の研究者からは意味の理解し難いものであった。これに対して上記の結果は作用について何も仮定をおかず又その結果の意味は解明である。基本集合についてはなお非遊走集合Ω(σ)とそれをめぐる集合(Ω(σ)\C(σ)など)の問題が残っているがそれらは解明出来なかった。
上の結果のほかに富山は位相力学系の不変部分集合への分解とA(Σ)のC^*環的分解の関係を明らかにし、青木は閉多称体上の微分関相写像の空間において周期点がすべて双曲型であるような系の集合のC^1-位相についての内点の集合は構造安定な系と一致するという多年の懸案を解決した。
このほか高井はC^*力学系に附随するC^*環(クロス積)の位相安定指数についてコンパクト可換群の作用のときの最良評価式を得た。更に酒井山下山田は関連するそれぞれの分野において成果を挙げ論文が発表されている。(山田についてはJapanese J.Math.に発表される予定)
ユークリッド空間の組合せ幾何学
日本学術振興会 科学研究費助成事業
前原 濶, 山田 裕史, 志賀 博雄, 家本 宣幸, 加藤 満生, 松本 修一
1987年 - 1987年
課題番号:62540059
配分額:2100000円 ( 直接経費:2100000円 )
ユークリッド空間の組み合せ幾何学として, 特に低次元図形の埋め込みに関する研究を行った.
1.グラフの埋め込みに関して, 任期のtreeは, 隣接する2点間の距離は1より大きく, 隣接しない2点間の距離は1位かになるように, 必ず3元本空間内に埋め込むことが出来ることを証明した. (R〓dlおよび他のチエコの数学者の協力を得て, 次元をこれ以下に落とすことは出来ないことも解った. )
2.Erd〓s等の研究した単位距離グラフの拡張として, ユークリッド空間内の点集合VとVの3点の作る三角形の面積の関連を調べた. 5点以上の点の集合Vに対し, Vの中のどの3点もおなじ面積の三角形を作るならば, Vは正則な単体の頂点集合である. また, Vが十分多くの点を含み, Vの中の3点の作る三角形の面積が, r種類しかなければ, Vの中の2点間の距離はたかだか(r^3+r^2)種類しかない.
3.4点からなる距離空間(X,d)に対し, 距離関数dをd^c(0<c<1/2)に変えると(X,d^c)は必ずユークリッド空間に埋め込めることが知られている(Blumenthal). 同様な結果をn点からなる距離空間について証明した. すなわち, 任意の自然数nに対して, c(n)>0が存在して, 0<c<c(n)かつlXl=nならば, (X,d^c)はユークリッド空間に埋め込むことが出来る. 特にc(5)【greater than or equal】1/2)log_2(3/2), c(6)【greater than or equal】1/2)log_2(4/3)としてとることが出来る.
4.グラフが3次元凸多面体のグラフになるための必要十分条件を与えるSteinitzの定理について, 特別な場合(極大平面的グラフの場合)の簡単な証明を考察した.
そのほか, 研究課題の周辺領域に入る多くの結果を得たが, それ等については, 割愛する.